2026/09/02(水)日本の鉄道貨物についてここ最近知ったことをまとめた
個人的にここ数年で知った日本の鉄道貨物の知識をまとめてみた。端的に言うと日本の鉄道貨物は微妙であるという話と、最近噂の北海道の貨物列車どうなんみたいな話。
ここ数年北海道で貨物列車が脱線したり、車両に亀裂が出たり、線路が破断したり、脱線したりだとか、鉄道貨物に関して良くないニュースをよく聞く気がするが、ぶっちゃけてしまうと日本の鉄道貨物は絶望的なまでに機能していないと思うので、どうにもならないと思う。
あくまで個人の意見であり、特にレポートのために集めた内容でもない、内容の正確性や妥当性に関しては期待しないでほしい。単純に毎回思い出そうとして忘れるので、まとめただけの記事である。
日本国内に存在する輸送モードについて
物流には輸送モードという概念がある。端的に言うと何を使って運んでいるかだ。
モードには自動車、鉄道、船舶、航空の四種類がある。内容としては自動車は貨物を運ぶあらゆる自動車で軽バンから大型トラックに至るまで、貨物輸送に使われるものなら何でも含まれる。バスやタクシー、旅客鉄道のように人間を運んでいるものは含まれないし、バスの座席やトランクを占有してる客の荷物も含まれない。
但し貨客船やベリー便のような貨客混載の場合、客を乗せていても貨物部分は貨物として扱われる。この時も客の荷物は貨物に含まれない。
例えばジャンボフェリーやオレンジフェリーはトレーラーやトラックの無人輸送をしているが、これは貨物輸送にあたる。
本記事では幾つかの資料を引用して利用するが、表記を統一するために自動車、鉄道、船舶、航空に統一する。
モード別の輸送シェアで最低なのが鉄道
国土交通省の物流の各モードの現状についてによると各モードごとの輸送量のシェアは以下になる。これは2022年度時点でのデータで、資料のトラックは自動車に読み替えている[1]。
| 指標 | 自動車 | 鉄道 | 船舶 | 航空 |
|---|---|---|---|---|
| 輸送量シェア (重量トン) |
91.40% | 0.91% | 7.67% | 0.01% |
| 輸送量シェア (重量トンx距離キロ) |
55.6% | 4.4% | 39.9% | 0.13% |
| 年間輸送量 (百万トン) |
3,825.9 | 38.2 | 320.9 | 0.5 |
| 年間輸送量 (百万トンキロ) |
226,886 | 17,984 | 162,663 | 550 |
見ての通り重量ベースでは1%すらなく、重量と距離ベースでも5%すらない。
輸送モード別のシェア推移
上図を見ると鉄道貨物は輸送量シェア(重量トン)、輸送量シェア(トンキロ)ともに年々減少している。半面で、自動車のシェアは伸び続けている。
背景には道路網の整備や自動車の普及により、モータリゼーションが進んだことと、貨物輸送の小口化が進んだことがあると考えられる。貨物輸送の小口化というのは宅配便の普及のことで、要するに通販を利用する人が増えた結果であると考えられる。今では信じられないことだが、かつてはそもそも道路がないことが当たり前であり、自動車で物を運ぶということ自体が難しかったのだ。今でも日本各地で高速道路が作られているが、このような道路網の整備は自動車輸送を後押しする要因の一つになっている。
鉄道は小口に対してはほとんど無力なので、なす術もない。一方で自動車は配送先まで荷物を運ぶことができるため、シェアを増やしているのだと思う。
日本の鉄道貨物の欠点
むしろ欠点しかなく、利点を探す方が難しい。
因みにこの話はすべて日本の話なので海外には当てはまらないケースも多い。日本と海外の貨物列車は全く別物だからだ。
鉄道貨物を利用するには載せ替えが必要
鉄道貨物が伸び悩む理由の一つが扱いづらさだ。例えば明日荷物を出すので家の前に来てほしいといっても鉄道は来てくれない。線路の上しか移動できないし、仮に自宅の前に線路と勝手踏切があったところで止まってはくれない。貨物列車が止まれるのは貨物駅のみである。何なら物流倉庫の前に線路があることもほとんど滅多に存在しない。
つまり貨物列車に荷物を積むには貨物駅まで運ぶ必要があるのである。一般的にはトラックを利用して運ぶが、貨物列車に荷物を載せるには当然載せ替えが発生する。何故なら貨物列車にトラックそのものを載せることはできないからだ。JR貨物はJR貨物の規格に沿ったもの以外運べない。
一般的に途中でモードが変わることのない輸送手段が最も好まれる。ドアツードアで運ぶことができるトラックはこの点に強みがある。船もコンテナ船であれば積み替えがあるが、フェリーの場合はトレーラーかトラック本体を載せて動かすので、一度トラックから降ろして載せ替える必要のある鉄道と比べると荷役コストは低い。
またJR貨物は基本的に国際海上コンテナを運べない[2]ため、これを貨物列車に載せる場合、基本的に詰め替えが必要になる。これは致命的な欠点だ。因みにJR貨物の標準コンテナは、国際海上コンテナと比べると遥かに小さい。
そもそもJRは国際海上コンテナを運ぶことを前提にして線路を作っていないため、どうしようもない。運べない理由は単純で背が高すぎて架線に接触する、トンネルを通れないなどの問題が出るためだ。一部区間では専用の貨車を使って運べるようにしているらしいが、トラックであればどこであろうと運べるので、これは明確な欠点である。
鉄道貨物に載せられるものには制限がある
先ほどJR貨物はJR貨物の規格に沿ったもの以外運べないと書いた通り、それ以外は運べない。例えば交通規制をしないと運べない発電所の発電機本体や、風力発電のローターを分解せずに丸ごと運ぶとか、そういったことはできない。当然だが放射性物質輸送容器も運搬できない。何なら鉄道車両本体すら運べないことがある。これらはすべてサイズオーバーなのだ。
JR貨物には甲種輸送と言って鉄道車両を輸送する制度があるが、在来線の線路は在来線が走ることしか想定していないため、在来線より巨大な新幹線車両や、標準軌を採用している私鉄の大型車両は運べないし、途中で軌間が変わる区間がある場合[3]も機関車が対応できないため自動車輸送に切り替わる。
余談だが自動車輸送の場合、上組のように巨大な超重量物を扱うのが得意な業者もあり、発電所のプラント本体や放射性物質輸送容器のような交通規制を伴う、超重量物はもっぱらトラックの天下であろう。
トラックで超重量物を運ぶ場合、途中で歩道橋などの障害物があっても許可を得れば一時的に撤去して運行することができるし、一般的な道幅に収まらない超重量輸送車も許可を取れば走行可能だ。
鉄道貨物は振動が多い
電車に乗っていると揺れが心地よく、うたたねしてしまいがちだが、この揺れは当然貨物列車にもある。このため振動に弱いものは運べない。鉄道で競走馬を運ぶことがないのも馬が振動と載せ替えに耐えられないためだろう。仮にJR貨物で馬を運べるなら態々馬運車で長距離を神経を尖らせて懇切丁寧に走ったりはしないだろう。
他にも箱モノを積み上げていると箱同士がすれて印刷が見えなくなる、パッケージの商品価値が失われると言ったこともあるようだ。
鉄道貨物は運賃が高い
運転士一人で運んでるんだから安いはず!と思いたいが、そんなうまい話はない。一般論としては500kmを超えたところでトラックに運賃で逆転すると言われているほど、運賃が高い。
貨物列車が走るには線路が必要だが、線路は消耗品なので交換が必要だし、放置してると軌間が開いたりするため保線作業も必要だ。また運転指令所には人間が必要だし、積み下ろしの荷役をするのにも人が必要だし、運行管理システムの開発にも人が必要だ。踏切や架線、軌道回路と言った鉄道の維持に必要なあらゆるものに対して費用が掛かるため、全体で見ると全く安くない。
但しJR貨物そのものはJR北海道やJR東日本・東海・西日本・四国・九州と言った各社に対して線路使用料を支払うことで運行しているので、そこまで大きく関係することはないだろう。とはいえ、JR北海道は赤字が続いており補選もまともにできない状況なのか、偶に貨物列車も脱線している気がする。
運賃についていい資料が見つからなかったが、ITmediaに高いと書いてあったのでこれを根拠とする。
自動車輸送であれば道路も信号機も税金で勝手に整備されるし、船舶輸送でも港湾は船会社が整備してるわけではないし、空港も同じである。鉄道だけが唯一全部自分たちでどうにかしているので、あらゆるコストが自分たちに降りかかってくるという地獄の構図なのだ。
JR貨物は旅客収入で成り立っている線路を間借りして運行しているだけなので、旅客が消えると成り立たなくなる。これが近年言われているたまねぎ列車存廃危機の話だ。貨物輸送だけでは維持できないのである。
他にもJR貨物は貨物列車が運行できなくなった際にトラックや船舶を利用した代替輸送を行える体制を作っている。
当たり前だがこのコストは運賃に転嫁されていることだろうから、運賃増の一翼を担っていると考えられる。
貨車を保有しないといけないケースがある
一般的に物流では荷主が輸送手段そのものを持たないといけないケースは多くない。何か運びたければ陸運会社を呼んでトラックを借りればいいのだ。
しかしJR貨物はそうではない。勿論JR貨物でも借りることはできるが、何でもかんでも借りられるわけではない。よく会社名の入った貨車やコンテナがあると思うが、あれらは私有で荷主の持ち物になっている。つまり貨車の購入や維持管理のコストがかかる。
トラックに任せておけばトラックの世話をする必要はないが
鉄道貨物は耐障害性が低い
鉄道は線路の上しか走れず、自由に追い越しすることもできない。この特性から災害で線路設備が破壊されたり、土砂が流入すると走れなくなるし、人身事故が起きても動けなくなる。
一方トラックなら道が寸断されれば迂回すれば済む。船舶の場合、津波でもなければ基本は問題ない。青ヶ島みたいな出鱈目な場所はさすがに無理だが、神戸港や横浜港が青ヶ島状態になることはまずない。
但し震災で壊滅的なレベルで港湾設備が破壊しつくされると流石に機能しなくなる。ここまで来ると復旧は鉄道の方が早い。阪神淡路大震災だとJRは70-80日程度で復旧している。一方で神戸港の復旧には二年かかっている。
但し船そのものは災害に対して極めて強く、荒天でも運行できる能力を備えている。例えば鉄道は大雨になると止まるが、船は台風が来ても動かすことができる。恐らくこの世で最も災害に強い乗り物が船だと言えるだろう。
飛行機はよく分からない。
めちゃくちゃ推進してる割にまるで普及しない
国交省はモーダルシフトを強く推進しており、立法までしているが、まるで普及していない。むしろシェアは年々落ちている。
これは本邦における鉄道貨物がいかに役に立っておらず、価値が認められていないかの最大の証左であると言えるだろう。トラックメーカーが開発しているトラックの追尾運転などは非常に注目が集まるが、鉄道輸送に至っては全く話題にもならない。要するにほとんど求められていないのである。
そもそも日本は狭いので仕方がないという面もある。アメリカの大陸横断鉄道や、シベリア鉄道のような次元でないと、恐らく真価を発揮しない。ましてや旅客優先運行である本邦ではなおさらである。
今後の鉄道物流のあり方に関する検討会だとか、色々やってるんだけどすべてが無駄というか…。
そもそも本邦における鉄道輸送のメリットはCo2の削減が最大みたいな感じになっており、これは日通の子会社であるNX総研の我が国の鉄道貨物輸送と物流をめぐる動向という資料にCo2という文字が11回も登場することから、Co2削減くらいしか価値がないということがよく分かる。
JR貨物が作ったJR貨物に関する基礎知識の資料にさえ「貨物鉄道の優れた環境特性を活かすとともに環境に配慮した事業運営を進め、2050年カーボンニュートラルをはじめとするグリーン社会の実現に貢献」とある始末である。
鉄道貨物輸送が輝くシーン
国土交通省の物流の各モードの現状についてによると1,001km以上の輸送シェアはトラック17.3%に対し、鉄道12.6%、船舶69.3%、航空0.8%となり、自動車に対しても勝負ができるラインに来ている。
誰が使っているのか?
佐川急便や西濃運輸のように貨物列車を一編成丸ごと借りているところは解り易い。その他は1,000kmを超える長距離を早く運びたい人かもしれない。あとはたぶん北海道辺りの人。
但しJR貨物の営業については芳しくないのか、東洋経済オンラインによると貨物列車を何とか使ってもらえるようお願いベースで営業をしているらしい。中々厳しい話だ。
日本以外はどうにかなっているのか?
少なくともアメリカではどうにかなっているが、これには理由がある。
アメリカは鉄道輸送のトンキロベースシェアが39.1%で、日本の9倍ほどある。この差が生まれる理由は単純で、アメリカは国土が広大で、日本と比べ山岳地帯の割合が少なく、鉄道が基本的に貨物輸送のために存在するからだ。日本と思想が真逆なのである。
日本では旅客輸送を行う線路を旅客列車の隙間を縫って貨物列車が頑張って走っているため、本数に限りがある他、長大な列車を運行することもできない。また旅客列車を運行することしか考えられていないのでトンネルの断面が狭い、架線の高さが低いのも要因だ。
アメリカの貨物列車は貨物が二階建てになっており、その編成は1.6kmも及ぶとされ、この写真では先頭に四両もの機関車が重連されていて、全く次元が違う。
こんな化け物レベルでやっと成り立つのであるのだから、比較するとおもちゃにさえ思えるJR貨物が微妙に見えるのも仕方がないだろう。
アメリカでも旅客鉄道は存在し、貨物列車と同じ線路を走っているが貨物列車が最優先のため、旅客列車は非常に遅いらしい。Wikipediaを見る限り運行本数も1日1本から週3本程度の運行と芸備線はおろか、一日三本しか来ない坪尻駅未満である。
致命的なレベルで少ないようで、車の方が早い上、アメリカは飛行機社会なので誰が使っているのかは謎だ。
余談だがJR貨物は輸送力を増強する気はないらしく、先ほどの東洋経済オンラインの記事にも「日本の鉄道貨物の比率は欧米並みになるか」の問いに対し、JR貨物の石田忠正相談役が「われわれにそこまでの輸送能力はありませんよ」と返すシーンがある。
結局北海道はどうなるのか?
旅客輸送が死ねば貨物単体で維持できるだけの収入を得ることができない以上、貨物は滅ぶしかないだろう。元より貨物ターミナルまで陸運する力はあるのだから、単に輸送先を港に変更して船で運べばよいだけだと考えている。
港まで遠くて難しいという話であれば、税金で保護するなりしないとどうにもならないとは思う。何故なら大半は輸入品の玉ねぎで不自由せず、国産を好む一部の人が買っているだけだからだ。
例えば⽇本政策⾦融公庫の令和7年1⽉調査によると、3割⾼を超える価格でも国産品を選ぶ割合は15.1%、3割高までなら国産を選ぶ割合は40.8%、同等価格なら国産品を選ぶは28.8%、国産品へのこだわりがないのは15.2%だった。アメリカ産と北海道産でどれほど価格差があるかは不明だが、仮に農家が協力して鉄道を維持しようとなった場合、輸入品より価格は大きく上がるだろうから、買う人は余計にいなくなるかもしれない。
食の安全保障という意味では税金を投入して貨物路線を保護する価値はあるかもしれないが、それをどこまでするかは難しい話だろう。但し廃線にするかどうか選ぶのは玉ねぎ農家だとも思う。例えば世の中には臨海鉄道と言って専ら貨物輸送に使われている鉄道会社が存在する。この応用で玉ねぎ輸送のための鉄道会社を作るのは選択肢として考えられるかもしれない。
ホクレンによると輸送モード別で見た場合、玉ねぎは60.1%が鉄道、38.9%が船舶で、じゃがいもは35.9%が鉄道、63.6%が船舶となっており、記事の内容からすると港までトラックで運べる距離にあるじゃがいも農家は鉄道より割高な船舶を利用しているらしい。どうやらこれは畑と貨物列車との距離などの相性が関係しており、貨物列車が使いやすい立地ではたまねぎ、そうでなければじゃがいもが栽培されるといった傾向にまで影響しているようだ。
例えば北見の選果場から苫小牧港までは330kmあり、この距離をトラックで運ぶのは厳しいので鉄道に依存しているとある。しかも北見駅だけでは積みきれないので180km離れた北旭川駅も利用しているとのことだ。結果的に鉄道から船に乗せ換える旨味もないので、そのまま道外に出荷されているのだろう。
廃線のシナリオで考えた場合、サロマ湖など、近隣の汽水湖に港湾を整備し、そこから貨物船を出すことも出来なくはないだろう。玉ねぎもじゃがいもも日持ちする作物なので、港まで運べさえすれば後は船でいいだろうし、船で大量に出荷して需要地の倉庫で保存するといった手もとれると思うし、何より今日の明日で廃線という話でもないのだから、それまでに何かしら準備できていればよいと思う。もしかするとその頃には道東のような過疎地であれば自動運転や、追尾式トラックが早くに実用化され、苫小牧港までの問題が解決するかもしれない。
今後モータリゼーションの進展や人口減少により末端地域が不自由になるのは不可避であることから、将来的に無人になるような地域での玉ねぎ栽培はなくなり、太平洋ベルト以外の人口が希薄になった頃合いには千葉県辺りが産地になる可能性もある。
つまるところ、狭い視野、個々で見ると困る農家は出来るかもしれないが、広い視野で、北海道全体で見れば問題を感じる人はいないのではないのではないかと思う。
- 2022年度の自動車輸送統計年報では営業用・自家用を問わず全種類ひっくるめた値として出ていたため ↩
- JRの名誉のために書いておくと運べるようにしようと努力はしているし、部分的に取り扱いのある線区も存在する ↩
- 川崎車両で製造されたE723系5000番代が、和田岬から郡山まで甲種輸送され、その後山形まで陸送された話で、途中で軌間が変わるので、その部分はトラックによって運ばれた ↩



