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卓球少女 -閃光のかなたへ-を観た

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文芸::アニメ文芸::映画

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プリプリの舞台挨拶付き上映にT・ジョイ梅田の席を取ったら「卓球少女 -閃光のかなたへ-」という珍しそうな作品を見かけたので、本作を観た鑑賞録。

内容的には中国のアニメスタジオが制作した卓球をテーマにした美少女スポ根ものといった感じだが、独特な表現や雰囲気の作品で、これは中々ない作品だと思ったので、その内容を書いてゆく。

異色の中国2Dアニメ

本作は日本で作られたといわれても違和感がないほどに日本的な絵柄の2Dアニメだ。中国のアニメ映画は3D作品が多いか、2Dであっても独特の絵柄であることも少なくない印象だが、本作は非常に日本的だった。

一方で鍛えられた肢体や筋肉を強調したアグレッシブな描写が多く、これは日本の美少女アニメには余りない要素で、ここは本作で特徴的な要素といえるだろう。

お色気皆無

日本のアニメと比べると圧倒的にお色気がない。本作の舞台は高校だが、押し並べて胸が薄い。モブキャラに一人巨乳が居た程度で、驚くほど薄い。ここまで健全方向に倒した作品も珍しい。

公式のキャラ紹介に至っては、ほぼ絶壁で、ガタイがいいのもあり、男…?と首をかしげてしまった。恐らくこれは中国の表現規制も関係していると思う。

ただこの色気のなさは本作のスポ根精神を遺憾なく引き立てるのに随分役立ったと思う。煩悩がない。シュッとしている。

シャワーシーンすらシャワーヘッドが出てくるだけという潔さである。

タイトルやロゴ、OP/EDのローカライズ

本作はタイトルや、そのロゴ、OP/EDがローカライズされている。邦題は「卓球少女 -閃光のかなたへ-」だが、原題は「白色闪电 Pingpong!」だ。

タイトルロゴに小さくTAKKYUUUUUUUUUUとあるが、これもローカライズだろう。こういった些細なところまで力を入れているのはいいと思った。

因みに卓球は日本語であり、Table tennisとも関係ないらしい。中国語では卓球は乒乓球と書き、この文字列は作中で何度も出てくる。

登場人物の多様性

OPに出てきたキャラだけの話だが、異様なまでに多様なタイプをカバーしているように感じた。

真面目メガネっ子、クールビューティー、そばかす娘、じゃじゃ馬、目の下ホクロ、天真爛漫などなど、やたら手幅くカバーされている。性癖ブレイカーか何かか?いや、そんな意図はないと思うが。

顔のバリエーションがすごいので日本アニメにありがちな髪の色でキャラを区別するといった要素は薄めに見えた。書き分けが凄まじい。

またビジュアルだけでなく、キャラクターの性格も各キャラかなり尖っていて、ここまでキャラが立っていて確立した魅力を持つ作品もなかなかないと思った。

意外と日本と変わらない学生生活

本作はいわゆる学園ものになるので、中国の高校の風景も出てくるわけだが、そこまで日本と変わらない。精々教室の入り口にICT的なモニタがある程度で、校舎の作りや机など大まかな雰囲気は日本そのものだ。

初年度は教科書を配ったり、授業も黒板に板書したり、プリントを配ったり、教師に当てられて発表したり、まんま日本だ。大きな違いといえば精々制服がジャージなことくらいだろうか?

校舎の様子などは実際に高校に行って取材をしたそうだが、制作陣は教室の入り口に電子掲示板があることに驚いたという。

リアリティの凄い卓球

卓球の練習シーンではおよそ卓球と関係ない特訓が出てくる。例えばシャトルラン的なことをしていたり、縄跳びをするなど。基礎的な体力づくりや体幹作りが描かれる作品は珍しいと思う。

また卓球のシーンは躍動的で、目にも止まらない高速なやり取りや、コートから打ち出された球をスライディングで打ち返すなど、かなりダイナミックな表現が多く、見ていて興奮した。筋肉の描写もよく、スポーツマンを見ている感じがすごかった。ここまで汗臭さを感じる作品はめったにないと思う。

実際に試合のシーンは現実の試合を参考に、辻褄が合うように作りこんでいるらしく、リアリティの追及が半端ない。サーブ権にまで配慮して作りこんでいるのは流石だ。日本の作品だとスポーツに限らず、ルールの不備を指摘されるものも少なくないだろう。例えば響け!ユーフォニアムでは楽器の持ち方が違うという指摘がよくあった気がする。

制作にあたってはスタッフにいた卓球の経験者や、プロのコーチを召還するなど、かなり再現性には力を入れたようだ。

リアリティの追及

本作は中国の視聴者が見たときに違和感を持たないように、現在の中国の風景を再現することに注力したとのことで、全体的にリアリティが強い。タピオカを飲むシーンも出てくる。つまりタピオカ屋は中国にも進出しているわけだ。

エンディングでは舞台となったであろう浙江省杭州市上城区の名所的なものが紹介されており、聖地巡礼したくなるような仕組みが非常によかった。トラペジウムでテカポ湖に行った人がいることを考えると、より身近な杭州に行こうと思う人もいるかもしれない。本作はそこまで刺さる作品ではないと思うので、行く日本人がどれほどいるかは未知数だが…。

またリアリティを追求する傍らで、序盤でジャン・ルオイが走っているシーンなどでは伝統的中国の風景をミックスしているという点も見逃せないところだ。

最後に

全体的に作りが精緻で、切れ味のいいスポ根作品だと感じた。そして本作は未完のままEDを迎えている。原作は6話まであり、今回はそのうち3話までを総集編として合体させたものらしいので、是非続編にも期待したい。

上映館は多くなく、特に西日本での上映館が極端に少ないが、個人的には今年の推し作品の一つだ。王道だがキャラ的にはジャン・ルオイ、ワン・ルーの組み合わせが好きだ。どこか抜けてるクールキャラとお調子ツンデレ委員長キャラはかなりいい。どっちもイケメンだし!

またパンフレットの表紙はいい紙を使っており、巻末には中国側スタッフが日本語を交えて書いたものもあり、是非触って読みたいアイテムだ。