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OCNバーチャルコネクト環境でIPv6サーバーを公開した時にやったことを派生させて更にIPv4にも対応させるプラン。

OCNバーチャルコネクトのIPoEでIPv4 over IPv6のMAP-E環境だと、IPv4ではWell-known portsが開けないが、PPPoEを使って取得したIPv4であれば開けるので、これとIPoE側のIPv6の併用でデュアルスタックでWell-known portsの開放を行い、サーバーを運用できるようにするのが目的だ。

確認環境

環境 内容
ISP OCN光
ISP契約 OCN 光 with フレッツ マンション・スーパーハイスピード 隼・プラン1・西日本
ISP接続方式 OCNバーチャルコネクト(IPoE, MAP-E)
RouterOS OpenWrt 24.10.0
ServerOS Ubuntu 24.04.3 LTS
HTTPD nginx 1.26.1
ドメインレジストラ Value Domain

今回の要件

やり方

サーバー側の準備

ufwではv4にも穴が開いている状態とする

  1. nginxの設定を開きIPv4向けにlisten 443 ssl;を追記して保存する
  2. nginxを再起動する

PPPoEインターフェースの作成

  1. SSHでOpenWrtに入る
  2. /etc/iproute2/rt_tablesを開き次のようにpppoeの行を追加、保存
    #
    # reserved values
    #
    128     prelocal
    255     local
    254     main
    253     default
    300     pppoe
    0       unspec
    #
    # local
    #
    #1      inr.ruhep
    
  3. ルーターを再起動
    • reboot
  4. LuCIに入る
  5. Network→Interfacesを開く
  6. Add new interfaceから、Nameをwanppp、ProtocolをPPPoEとしたインターフェースを作成する
    paste-image-2025-8-22_21-17-30-262.png
  7. General SettingsタブのDeviceにONUと疎通しているポートを指定し、PAP/CHAP usernameとPAP/CHAP passwordにISPの接続情報を入れる
    paste-image-2025-8-22_21-21-59-731.png
  8. Advanced Settingsタブを開き、Use gateway metricを10、Override IPv4 routing tableをpppoe (300)にする
    paste-image-2025-8-22_21-32-25-150.png
  9. Saveボタンを押して保存する
  10. wanインターフェースのEditを押す
  11. Advanced Settingsタブを開き、Use gateway metricを1にする
  12. Saveボタンを押して保存する

ファイアーウォールの作成

  1. 引き続きLuCI上で作業する
  2. Network→Firewallを開く
  3. ZonesのAddボタンを押す
  4. Nameをwan_pppoeにし、MasqueradingとMSS clampingにチェックを入れ、Covered networksでwanpppを選択し保存する
    paste-image-2025-8-22_21-34-55-256.png
  5. lan⇒wanのゾーン設定のEditボタンを押す
  6. Allow forward to destination zones:にwan_pppoeを追加し、保存する
    paste-image-2025-8-22_21-38-35-472.png
  7. Network→Interfacesを開く
  8. wanpppインターフェースのEditボタンを押す
  9. Firewall Settingsタブを開き、Create / Assign firewall-zoneにwan_pppoeが設定されていることを確認する。設定されていなかったら設定する
    paste-image-2025-8-22_21-41-43-664.png

サーバーだけをPPPoEのIPv4通信の対象にする

  1. 引き続きLuCI上で作業する
  2. Network→Routingを開き、IPv4 Rulesタブを開く
  3. General SettingsタブのIncoming interfaceをlanに、SourceをサーバーのIPにする
    paste-image-2025-8-22_21-45-47-319.png
  4. Advanced Settingsタブを開く
  5. Tableにpppoe (300)を設定し、保存する
    paste-image-2025-8-22_21-46-59-928.png

NATを設定する

  1. 引き続きLuCI上で作業する
  2. Network→Firewallを開き、Port Forwardsタブを開く
  3. Addボタンを押す
  4. Nameに適当な名前を付け、Restrict to address familyをIPv4 only、Source zoneをwan_pppoe、External portを443、Internal IP addressを転送先のサーバーIP、Internal portを443にして、保存する
    paste-image-2025-8-22_21-59-16-456.png

疎通確認

  1. Network→Interfacesを開き、wanpppのIPv4を拾う
  2. ドメインレジストラの設定でAレコードにこれを登録
  3. 適当な外部サーバーからcurlを投げて中身が返ってきたらOK
    curl -4 -v https://example.com
    

IP変動対策にDDNSを設定する

/etc/hotplug.d/iface40-pppoeというファイルを作り、以下の内容を記述する。

#!/bin/sh

[ -n "$DEVICE" ] || exit 0
[ "$ACTION" = ifup ] || exit 0
[ "$INTERFACE" = wanppp ] || exit 0

vdpw=ここにDDNS更新用のパスワード
pppoeaddr=$(ip -4 addr show pppoe-wanppp | head -2 | tail -1 | awk '{print $2}')
logger -t "DDNS - PPPoE IP" $pppoeaddr
# hoge.example.comに対して更新リクエストを飛ばす例
logger -t "DDNS - DOMAIN: hoge" $(wget -O - "https://dyn.value-domain.com/cgi-bin/dyn.fcg?d=example.com&p=$vdpw$&h=hoge&i=$pppoeaddr")

# When making requests for multiple domains, wait 60 seconds between each request

このスクリプトはhotplugイベントが発生したときにファイルパス順に呼ばれるスクリプトらしい。

ひとまずデバイスでなく、インターフェイスが起動したときで、かつインターフェース名がwanpppの時に実行されるように組んである。

注意点として、このエンドポイントはレートリミットがシビアで、60秒以内に送ると503を返してくるようなので、複数回投げる場合はsleep 61とかして間隔をあけると良さそうだ。数が増えてきたらバリュードメインAPIのDNS設定APIを利用した方が早いだろう。

ただしこのAPIはTTLの制御に難があり、処理方法によっては3600秒に固定される罠が潜んでいるので注意が必要だ。

トラブルシュート

curlで「Connection refused」や「接続が拒絶されました」と出る

  • /var/log/ufw.logにログがあればufwで穴をあける(まずこれはない)
  • ファイアーウォールかルーティングかNATの設定のどこかがおかしいので見直す。

雑感:かなり苦しい

IPv4, v6のデュアルスタックに出来たのはいいが、幾つかの端末で繋いだところIPv4側に流れるケースがあった。メインのv6でなく、オプションのv4に行くという状況はやや残念だ。

構成的にもマルチセッションという微妙な形態で、v4とv6でインターフェースが二系統あり、セキュリティもNATとFWがあり、なかなか複雑な状態になってしまった。

Mastodonにおいてはv4IPのインスタンス(兵庫丼)との疎通はTLレベルでは出来たものの、画像が出なくなるという頭が痛い問題に出会った。

paste-image-2025-8-23_2-35-19-483.png

Misskey.ioからは疎通できず、こちらからはユーザープロフィールまではアクセスできるがフォローを押しても音沙汰がない。

結論としてはリッチなアプリケーション通信を伴う用途において、この方式は向かない気がした。恐れくこれはルーターより外側がIPoEとPPPoEで別系統になっている関係で、通信が混乱して上手くいかないパターンがあるのではないかと感じている。

DDNSも制約が厳しいし、Value DomainのAPIはあるだけマシではあるものの、超絶使いづらい問題もあり、この環境においてのデュアルスタックはあきらめようと思った。

まぁいい勉強にはなったので、そのうち何かに活かせるだろう、きっと。